2025/12/05
海外の銀行・取引先・当局に書類を出すとき、いちばん時間を溶かすのが「結局、何を何通そろえればいいの?」問題です。このページでは、登記簿謄本(登記事項証明書)を軸に、用途別/国別に”よく求められる書類セット”の考え方を整理します。
用途別(銀行/入札/子会社設立/ライセンス)
🏦 1) 銀行(口座開設・KYC)
銀行はAML/KYCの観点から、会社の存在証明+支配構造+署名権限者の確認をセットで見ます。
よくある要求(例)
- 登記簿謄本(英訳を含む)
- 定款(英訳を含む)
- 取締役・UBO(実質的支配者)の情報
- 署名権限者の証明(署名見本、取締役会決議など)
- 代表者/役員のパスポート、住所証明
- 決算書(必要な場合)
📋 2) 入札(海外入札・ベンダー登録)
入札は「その法人が正当に設立されたこと」の確認が中心で、法人の身分証明が刺さります。
よくある要求(例)
- 登記簿謄本(英訳)
- 日本法人証明(英文)など、法人性を示す補助書類
- 代表者権限の証明(委任状や決議書が必要なことも)
🏢 3) 子会社設立・支店/駐在員事務所
“親会社の身元確認”がガッツリ入るため、銀行と近いセットになります。
よくある要求(例)
- 親会社の登記簿謄本(英訳)
- 定款(英訳)
- 取締役会決議(現地設立・出資・代表者選任など)
- 代表者/署名権限者のID・住所証明
- グループ構成図(求められることが多い)
📄 4) ライセンス(許認可・登録)
「事業目的」「代表者権限」「会社の存続状況」を見られることが多く、登記簿の”どの項目を見せるか”が重要になります。
米国などでは、会社が適法に存続していることを示す Certificate of Good Standing が、登録や銀行口座等で必要になり得ます。
国別(米/英/SG/HK等)
ここは「よく出る代表例」を押さえるのがコツです。国ごとに名前は違っても、見たい中身は似ています(登記情報・定款・役員/UBO・署名権限・ID等)。
| 国 | キーワード | ポイント |
|---|---|---|
| 🇺🇸 米国(US) | Good Standing (存続証明) |
州ごとに用語や手続きが違うため、「どの州の、何という名称の証明か」を提出先に確認 |
| 🇬🇧 英国(UK) | Certificate of Incorporation (設立証明) |
Companies Houseが発行。銀行口座開設などで必要になる場合あり |
| 🇸🇬 シンガポール(SG) | ACRA Business Profile + Certificate of Incorporation |
口座開設で必要。Constitution、取締役会決議、役員ID/住所証明もセット |
| 🇭🇰 香港(HK) | Business Registration Certificate + Certificate of Incorporation |
定款(Articles)、incumbency相当の書類などが軸になりやすい |
書類セット例(登記簿+定款+印鑑証明…)
提出先別の”細かい指定”が来る前に、まずはこの「基本セット」を用意すると強いです。
A. 最小セット(まずこれ)
- ✓登記簿謄本(登記事項証明書)
- ✓定款
- ✓代表者/役員のID(パスポート等)
- ✓署名権限の分かる書類(求められる場合)
B. 銀行・KYCで”よく追加”されるセット
- +取締役・UBO(実質的支配者)情報
- +会社のグループ構成図
- +監査済み財務諸表(必要な場合)
- +取締役会決議(口座開設、署名権限者の指定等)
C. 入札・当局向けで”刺さる”補助書類
- ★日本法人証明(英文)など、法人性を英語で示す証明
- ★委任状(代理人が動く場合)※認証が絡むことあり
“発行日”や”原本”要件の考え方
ここはトラブルが多いので、先にルールとして押さえておくのが得です。
1) “発行日◯か月以内”は、提出先と証明手続きの両方で効く
提出先が「発行から3か月以内」などの条件を出すことがよくあります。加えて、外務省の公文書証明でも「発行日より3か月以内」等の要件が明示されています。
→ 「提出先の期限」+「認証に出す時点の期限」の両方を意識すると手戻りが減ります。
2) “原本”と”コピー可”は、先に確認しないと詰む
外務省の案内では、発行機関が公的機関でも「コピーには証明できない」旨が明記されています。
→ 提出先が「認証付き」を求める場合、原本指定になりやすいので、部数も含めて最初に確認が鉄則です。
3) 書類の取り扱い(ホチキス・加筆)にも注意
外務省は、ホチキスを外したり加筆した文書は受け付けられない、と注意しています。
→ 認証が絡む可能性があるなら、スキャン・コピーはしても、原本の加工はしないが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 海外提出の必要書類は、まず何から確認すればいいですか?
A. まずは提出先に「必要書類リスト」と「認証の要否(アポスティーユ/領事認証)」を確認するのが最優先です。国ごとの一般論より、提出先(機関・銀行・取引先)の運用が最終決定になります。
Q. 銀行口座開設(KYC)でよく求められる書類は何ですか?
A. 典型的には、登記情報(登記簿等)+定款+役員/UBO情報+署名権限者の確認書類+本人確認(ID/住所証明)です。銀行はコンプライアンス上、会社の身元確認に加えて支配構造まで確認する傾向があります。
Q. 入札やベンダー登録だと、銀行と何が違いますか?
A. 入札は「法人が正当に存在すること」の証明が中心で、法人性を英語で示す書類が刺さることがあります。たとえば日本法人証明(英文)が海外入札などで必要になるケースがあります。
Q. 子会社設立・支店開設では、何が追加されやすいですか?
A. 取締役会決議(設立・出資・代表者選任など)や、親会社の決算書、グループ構成図などが追加されやすいです。「親会社の身元確認+意思決定の証明」が求められやすいイメージです。
Q. 国別(米・英・SG・HK)で書類名が違うのはなぜですか?
A. 国ごとに制度や発行主体が違うため、同じ目的でも書類名が変わります。たとえば英国では設立証明(Certificate of Incorporation)、シンガポールではACRAのBusiness Profile等が軸になります。
Q. “発行日〇か月以内”は、どう考えればいいですか?
A. 提出先の期限に加えて、認証(外務省の証明)に出す時点でも発行日要件があるため、両方を意識するのが安全です。外務省の公文書証明では、発行日から3か月以内等の条件が明示されています。
Q. 原本が必要か、コピーで良いかはどう判断しますか?
A. 提出先の要件が最優先で、認証が必要な場合は原本指定になりやすいです。外務省の案内ではコピー不可の注意が示されています。
Q. 登記簿英訳と認証は、どの順番で進めればいいですか?
A. まず提出先要件(認証の種類・翻訳の要否)を確定し、次に登記簿を取得→英訳→必要に応じて認証、の順が基本です。先に認証を取ってから翻訳を付け足すと、提出先の要件に合わず手戻りになることがあります。