登記簿の翻訳とスーツケース

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日付の英語表記は統一を。登記簿翻訳で押さえておきたいポイント

time 2026/01/19

登記簿謄本を英訳していると、日付の記載が頻繁に出てくる。設立年月日、役員の就任日・退任日、登記日——登記簿は日付だらけの書類だ。

この日付をどう英訳するか。実は、正解は一つではない。複数の表記方法があり、どれを選んでもよい。ただし、統一されていることが絶対条件だ。

この記事では、日付の英語表記のバリエーションと、翻訳実務で気をつけるべきポイントを整理する。

日付の英語表記——主なパターン

英語で日付を書く方法はいくつかある。代表的なパターンを挙げてみよう。

パターン 例(2025年1月15日) 特徴
イギリス式 15 January 2025 日→月→年の順。フォーマル
イギリス式(略語) 15 Jan. 2025 / 15 Jan 2025 月を略記。省スペース
アメリカ式 January 15, 2025 月→日→年の順。カンマあり
アメリカ式(略語) Jan. 15, 2025 月を略記
ISO形式 2025-01-15 年→月→日。国際標準。誤読なし
スラッシュ形式 15/01/2025 または 01/15/2025 誤読リスクあり(後述)

どれが正しいか、という問いには意味がない。どれも正しい。重要なのは、一つの文書内で統一されているかどうかだ。

なぜ統一が重要なのか

一つの登記簿翻訳の中で、日付の表記がバラバラだったらどうなるか。

たとえば、設立日は「15 January 2025」、役員の就任日は「Jan. 20, 2025」、登記日は「2025-02-01」——こんな文書を受け取った相手は、混乱するだろう。「この翻訳者は、ちゃんと仕事をしているのか?」と疑われても仕方がない。

統一されていない文書は、プロフェッショナルな印象を損なう。内容が正確であっても、体裁の乱れは信頼性を下げる。

また、統一されていないと、確認作業が煩雑になる。「この日付とこの日付は同じ日か?」と照合するとき、表記が違うとひと目で分からない。ミスの温床にもなる。

月の正式名称か、略語か

日付表記で迷うポイントの一つが、月を正式名称で書くか、略語で書くかだ。

正式名称:January, February, March, April, May, June, July, August, September, October, November, December

略語:Jan., Feb., Mar., Apr., May, Jun., Jul., Aug., Sep. (Sept.), Oct., Nov., Dec.

フォーマルな文書では正式名称が好まれることが多い。しかし、翻訳実務では略語を選ぶことにも合理性がある

理由は単純で、誌面の都合だ。

登記簿翻訳では、原文のレイアウトに合わせて訳文を配置することが多い。表形式のセルの中に日付を入れる場合、「September」や「November」のような長い月名は、セルに収まらず次の行にまたがってしまうことがある。

「15 September 2025」と書きたいのに、「15」と「September」の間で改行が入ってしまう——こういうことが起きる。これは見栄えが悪いし、読みにくい。

「15 Sep. 2025」や「15 Sep 2025」であれば、コンパクトに収まる。略語を使うことで、レイアウトの問題を回避できるのだ。

もちろん、略語を使う場合も統一は必須だ。「Sep.」と「Sept.」が混在していたり、ピリオドの有無がバラバラだったりすると、それはそれで問題になる。

スラッシュ形式の落とし穴

日付表記で注意が必要なのが、スラッシュ形式だ。

「01/02/2025」という表記を見たとき、これは「1月2日」なのか「2月1日」なのか。

アメリカでは「月/日/年」の順で書くので「1月2日」、イギリスや多くの国では「日/月/年」の順で書くので「2月1日」と読む。同じ表記なのに、読む人によって解釈が異なる

登記簿翻訳は、さまざまな国に提出される可能性がある。アメリカに出すこともあれば、イギリスやオーストラリア、シンガポールに出すこともある。読み手がどちらの慣習で読むか分からない以上、スラッシュ形式は避けた方が安全だ。

誤読のリスクを完全に排除したいなら、以下の形式がおすすめだ。

  • 15 Jan 2025——月が英語なので誤読されない
  • 2025-01-15——ISO形式。年→月→日が明確

和暦から西暦への変換は正確に

日本の登記簿は和暦で記載されている。「令和7年1月15日」「平成30年4月1日」といった具合だ。

英訳する際は、これを西暦に変換する必要がある。この変換で間違えると致命的だ。

和暦と西暦の対応表を確認しておこう。

元号 開始年(西暦) 計算方法
令和 2019年 令和○年 + 2018 = 西暦
平成 1989年 平成○年 + 1988 = 西暦
昭和 1926年 昭和○年 + 1925 = 西暦

たとえば、「令和7年」は 7 + 2018 = 2025年、「平成30年」は 30 + 1988 = 2018年だ。

間違いやすいのは、元号が切り替わった年だ。

平成31年は2019年だが、2019年5月1日に令和に改元された。つまり、「平成31年4月30日」は2019年4月30日、「令和元年5月1日」も2019年5月1日だ。どちらも2019年だが、元号が違う。

登記簿には「平成31年」と「令和元年」の両方の記載が出てくることがある。このとき、うっかり「平成31年 = 令和元年 = 2019年」という対応を忘れて、別の年に変換してしまうミスが起きうる。

古い登記簿では昭和の日付も出てくる。昭和64年は1989年だが、1989年1月7日までしかない。1月8日以降は平成元年だ。

和暦から西暦への変換は、必ず確認すること。特に元号の切り替わり前後の日付は要注意だ。

実務上のおすすめ

登記簿翻訳における日付表記について、実務上のおすすめをまとめる。

1. 形式を一つ決めて、文書全体で統一する

どの形式を選んでもよいが、一度決めたら最後まで同じ形式を使う。途中で変えない。

2. 誤読リスクのない形式を選ぶ

「15 Jan 2025」や「2025-01-15」のように、月が英語で書かれているか、年月日の順序が明確な形式を選ぶ。「01/15/2025」のようなスラッシュ形式は避ける。

3. レイアウトに応じて略語を使う

表のセルや狭いスペースに日付を入れる場合、「January」より「Jan.」の方が収まりがよい。略語を使っても問題ない。ただし略語も統一すること。

4. 和暦→西暦の変換は必ずダブルチェック

特に元号の切り替わり前後(平成31年/令和元年、昭和64年/平成元年)は要注意。変換表を手元に置いて、一つひとつ確認する。

5. 依頼者の指定があれば従う

提出先や依頼者から「ISO形式で」「アメリカ式で」といった指定がある場合は、それに従う。指定がなければ、上記のポイントを踏まえて自分で決める。

まとめ

日付の英語表記には複数のパターンがあり、どれを採用しても間違いではない。イギリス式でもアメリカ式でもISO形式でも、統一されていればよい

月の表記は、正式名称でも略語でも構わない。誌面の都合で略語を使うことには合理性がある。「September」が収まらないなら「Sep.」で問題ない。

注意すべきは、スラッシュ形式の誤読リスクと、和暦から西暦への変換ミスだ。特に元号が切り替わった年の日付は、慎重に確認する必要がある。

日付は地味な要素だが、一つの文書に何十回も登場する。統一されていない文書、変換ミスのある文書は、全体の信頼性を損なう。「日付ぐらい」と軽視せず、丁寧に扱いたい。

この記事の著者

ニシヤマ "登記簿マスター" カツユキ

翻訳専門タイナーズの代表者。2006年に原稿作成会社を立ち上げ、その後、翻訳業務を開始する。自身は言語学を応用した研究領域の大学院既卒者(修士)。表現のニュアンスを大切にしている。

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