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「公告をする方法」の英訳 —Public Notice か、Legal Disclosure か

time 2026/01/24

登記簿謄本には「公告をする方法」という項目がある。会社が法定の公告を行う手段、つまり官報、日刊新聞、電子公告などを記載する欄だ。

この「公告方法」を英訳するとき、定番はMethod of Public NoticeまたはPublic Notice Methodだ。しかし、「公告」という概念の本質を考えると、別の訳し方も成り立つのではないか。そんな話をしてみたい。

「公告」とは何か。プレスリリースではない

まず、「公告」という言葉の意味を確認しておこう。

日常会話で「公告」という言葉を使う機会はほとんどない。「告知」「お知らせ」「アナウンス」といった言葉の方が馴染みがあるだろう。

しかし、登記簿に出てくる「公告」は、これらとは性質が異なる。

公告とは、法令に基づいて、会社が一定の事項を公に告知する行為だ。

会社法では、一定の場面で会社に公告を義務づけている。たとえば、

  • 決算公告(計算書類の要旨を公告する)
  • 合併公告(合併に際して債権者に通知する)
  • 減資公告(資本金を減少する際に債権者に通知する)
  • 解散公告(会社を解散する際に債権者に通知する)

これらは「やりたければやる」ものではない。法律で義務づけられているのだ。やらなければ法令違反になる。

つまり、「公告」は会社が自発的に行う「プレスリリース」や「お知らせ」とは本質的に異なる。法に基づく強制的な情報開示だ。

英訳の定番。Public Notice

この「公告」を英訳するとき、定番はPublic Noticeだ。

「Public」は「公の」、「Notice」は「通知・告知」。合わせて「公に行う告知」という意味になる。

登記簿の項目「公告をする方法」は、以下のように訳される。

  • Method of Public Notice(公告の方法)
  • Public Notice Method(公告方法)

どちらも広く使われており、問題なく通じる表現だ。

Announcementではなぜダメなのか

ここで一つ疑問が浮かぶかもしれない。「告知」ならAnnouncementでもいいのではないか、と。

確かに、「Announcement」も「告知・発表」という意味を持つ。しかし、法的な義務としての告知というニュアンスが薄い。

英語で「Announcement」と言うと、プレスリリース、製品発表、イベント告知などを連想することが多い。会社が任意で行う情報発信のイメージだ。

一方、「Public Notice」は、法令や規則に基づいて行われる公式な告知を指すことが多い。政府機関の告示、裁判所の公告、企業の法定公告など、公的な性質を持つ告知に使われる表現だ。

だから、登記簿の「公告」を訳すときは、「Announcement」ではなく「Public Notice」を使う方が、その法的性質を正確に伝えられる。

ただし、ここで一つの問いを立ててみたい。

「公告」の本質が「法に基づく情報開示」であるならば、それをそのまま英語にした表現、たとえばLegal DisclosureStatutory Disclosureでも、理屈としては成り立つのではないか。

  • Legal Disclosure Method(法的開示の方法)
  • Statutory Disclosure Method(法定開示の方法)
  • Method of Legal Public Disclosure(法的な公開開示の方法)

これらの表現は、「公告」が法律に基づいて行われる強制的な情報開示であるという性質を明確に伝える。

もちろん、これらは「定番訳」ではない。登記簿翻訳の実務で広く使われているのは「Method of Public Notice」だ。提出先が期待する表現も、おそらくこちらだろう。

しかし、「公告とは何か」という本質を考えるとき、「法に基づく開示」という視点から英訳を考えることには意味がある。読み手に「これは法的義務に基づく告知である」というニュアンスをより正確に伝えられる可能性があるからだ。

実務での判断

では、実際の翻訳ではどうすればよいか。

1. 定番訳を使う

提出先が期待する表現、広く認知されている表現を使うのが無難だ。「Method of Public Notice」または「Public Notice Method」を採用しておけば、まず問題ない。

2. 必要に応じて補足する

もし読み手が「Public Notice」の意味を誤解しそうな場合、たとえば「単なるお知らせ」と思われそうな場合は、注釈を添えることもできる。「Public Notice (statutory disclosure required by law)」のように補足すれば、法的な性質が伝わる。

3. 文脈に応じた判断

学術論文や法的分析を目的とする文書であれば、「Legal Disclosure」「Statutory Disclosure」といった表現を使う余地もある。ただし、登記簿翻訳という実務文書では、定番訳に従うのが賢明だ。

公告の方法。3つの選択肢

ちなみに、日本の会社が選択できる公告の方法は3つある。

1. 官報

政府が発行する官報に掲載する方法。最も伝統的で、多くの会社がこれを選択している。英訳では「Official Gazette」。

2. 日刊新聞紙

日刊の新聞に掲載する方法。定款で指定した新聞に公告を載せる。

3. 電子公告

会社のウェブサイトなどで公告を行う方法。近年増加している。英訳では「Electronic Public Notice」。

登記簿の「公告をする方法」欄には、会社がどの方法を採用しているかが記載されている。

結論

「公告」は、法令に基づいて会社が行う強制的な情報開示だ。プレスリリースや任意のお知らせとは性質が異なる。

英訳の定番はMethod of Public NoticeまたはPublic Notice Method。「Announcement」では法的な性質が伝わりにくいため、避けた方がよい。

一方、「公告」の本質が「法に基づく情報開示」であることを考えれば、Legal DisclosureStatutory Disclosureといった表現も、理屈としては成り立つ。定番訳ではないが、「公告とは何か」を考える上では意味のある視点だ。

実務では定番訳を使いつつ、必要に応じて「これは法的義務に基づく告知である」という補足を添える。そんな使い分けが現実的だろう。

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この記事の著者

ニシヤマ "登記簿マスター" カツユキ

翻訳専門タイナーズの代表者。2006年に原稿作成会社を立ち上げ、その後、翻訳業務を開始する。自身は言語学を応用した研究領域の大学院既卒者(修士)。表現のニュアンスを大切にしている。

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