2025/12/05
海外の銀行口座開設や取引先とのやり取りで、英訳された登記簿謄本が求められる。
持株会社と事業会社、両方の登記簿の英語版を求められているケースを言えば、意外と見落とされがちなのが「表記の統一」です。同じ役員の名前なのにローマ字が微妙に違う、住所の書き方がバラバラ——こうした細かいズレが、あとで思わぬトラブルを招くことがあります。
今回は、なぜ表記統一が必要なのか、どこを揃えておくべきかをまとめてみます。
そもそも、なぜ表記がバラつくと困るのか
ホールディングスと事業会社では、役員や所在地、事業内容など、重複している情報がかなりあります。ところが、別々に英訳を進めると、同じ人の名前が「Taro Yamada」と「Taroh Yamada」になっていたり、同じ住所なのに書き方が違っていたり、ということが起こりがちです。
海外の金融機関や行政は、書類に書かれた表記をそのまま受け取ります。日本のように「まあ同じ人でしょう」とは見てくれません。表記が違えば「別人では?」「別の会社では?」と疑われ、追加資料を求められたり、審査が止まったりすることがあります。(もちろん、絶対にということではなく、まったく問題視されないケースもあります)
特に揃えておきたいポイント
登記簿に出てくる情報のうち、複数の法人で共通しやすいのは次のあたりです。
社名の英語表記
「Holdings」なのか「Holdings, Inc.」なのか。「Co., Ltd.」と「Corporation」のどちらを使うか。企業によって方針は違いますが、一度決めたらグループ全体で揃えておくのが無難です。
役員名のローマ字
パスポートと違う表記を使ってしまうと、本人確認でつまずくことがあります。基本的にはパスポート記載のローマ字に合わせるのが安全です。
住所の書き方
日本の住所は「○丁目△番地□号」のような独特の形式があるので、英訳のルールを決めておかないとバラつきやすい部分です。都道府県をどう書くか、建物名をどう扱うかなども含めて、ひとつのルールに統一しておくと楽です。
事業内容の英訳
事業目的の欄は長文になりがちで、似たような表現が何度も出てきます。「development」「planning」「design」「operation」といった単語の使い分けを決めておくと、文書全体がすっきりします。
統一しておくと、こんなメリットがある
まず、KYC(本人確認)や銀行の審査がスムーズになります。表記の不一致は、審査担当者が最も引っかかりやすいポイントのひとつ。「この役員名、どっちが正しいの?」というやり取りが減るだけで、手続きのスピードがだいぶ違います。
また、登記簿の英訳は、契約書や会社案内など他の英語資料のベースにもなります。ここで表記が決まっていれば、後から資料を作るときに迷わなくて済みますし、社内での認識も揃います。
おすすめは「英訳表記ルール」を先に作っておくこと
実務で一番効果があるのは、翻訳を始める前に「英訳表記ルール」を1枚作っておくことです。
内容としては、
- 社名の公式英語表記
- 役員のローマ字表記
- 住所の書き方ルール
- 事業内容でよく使う英語表現のリスト
このくらいあれば十分です。
この1枚があるだけで、ホールディングスも事業会社も統一された英訳ができますし、今後の英語文書作成にもそのまま使えます。
登記簿の英訳というと「正確に訳す」ことに意識が向きがちですが、グループ会社を複数持っている場合は「整合性」も同じくらい大切です。
表記のズレは、海外での審査遅延や余計な問い合わせにつながります。最初にルールを整えておけば、そうした手間を避けられますし、英語書類全体の信頼性も上がります。
これから登記簿の英訳を依頼する予定がある方は、ぜひ「表記ルールを先に決める」というステップを取り入れてみてください。